生きてる

「八本脚の蝶」二階堂奥歯さん。

 

3日ほど前にこの本を読み終えて、それからずっと引き摺られている。

生きにくい人間というのはいるもので、不肖わたくしも若い頃はその気があった。

わたしごときが共感、とかそんなのを感じるにはおこがましいのだけど、わたし、あるいは皆、が切り捨てて殺してきたものを、大事に大事に持ち続けて耐えられなくなったのだろうな、彼女は、と思う。辛い、辛い、その気持ちがあったことだけ覚えている。

 

時間が遅くて人のいない食堂でお昼を食べて、時間があったのでこの本を読んでいた。

まだ終わりには間があるのに、ちっとも悲しくもないのに、なんだかほろほろと涙が溢れそうになった。わたしが殺したあの頃のわたしと、彼女と、を、懐かしく思い、哀れに思い、少しだけ羨ましくも思う。

 

今はひとりで、楽になって、すぐ目の前のことだけを見て生きている。