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「熊野でプルーストを読む」

 

「彼の絵を見るたびに思い出すのが、サウダーデというポルトガル語だ。これは、十数年前、ポルトガル出身のピアニスト、マリア・ピリスが日本公演の際、語った言葉で、私ははじめてその言葉を知り、深く印象に刻んだ。」

 

この文章を読むわたしのなかには(サウダーデなんてどこ吹く風か)ピリスの弾くピアノの音が鮮やかに溢れ出し、思いがけないことと思ったのだった。今年の春に聴いたあの音色がわたしの裡に眠っていて、こんなことで呼び起こされるとは。