恋心の追悼

少し前に、須賀敦子さんの書簡が発見されたという記事が出ていた。

もう私の恋は終りました。その人をみてもなんでもなくなってしまった。これでイチ上り。一寸淋しいきもちだけど しずかで明るいかんじも戻ってきました。

わたしもほんとにそんな感じで、恋そのものよりも、死んでしまった恋心を哀れに思う。そして、「しずかで明るいかんじ」もそのとおり。

 

 

横浜で開かれていた展覧会には既に行った後だったが、青いインクで書かれた須賀さんの書簡、ちょっと丸くて端正な文字の連なりに、須賀さんのことを偲んだことだった。

電車の中で、座っているわたしの前に、就職活動中らしいスーツ姿の女学生2人。

「影響を受けた本って何て答える?何かある?」

「わたし『インパラの朝』かな。」

うーん、なかなかいいチョイスだな。と思うわたしの鞄の中には「愛と憎しみの豚」、同じ中村安希さんの作だ。

豚もいいよー、と心の中で思いつつ、ぐっと澄ました顔で耳を澄ませる。

自分の表現

女子の古本屋 - 岡崎武志

 

職業として?儲からなくても、生き方として?

 

古本屋とまでいかなくても、わたし、本のソムリエとかやりたいなー。

と妄想するのだが、リアルに考えるとジャンルが偏ってるのと、知っている人じゃないとなかなかこれをお薦め!と言えないので無理か。。知人にすすめた本は結構あたりで評判いいのだが。。

そういう意味で、本と人をつなぐ楽しみってわたしも少しだけ知っている気がする。女子、という言い方はあまり好きじゃないが、女史たち、応援しています。

 

 

ネットワーク

「熊野でプルーストを読む」

 

「彼の絵を見るたびに思い出すのが、サウダーデというポルトガル語だ。これは、十数年前、ポルトガル出身のピアニスト、マリア・ピリスが日本公演の際、語った言葉で、私ははじめてその言葉を知り、深く印象に刻んだ。」

 

この文章を読むわたしのなかには(サウダーデなんてどこ吹く風か)ピリスの弾くピアノの音が鮮やかに溢れ出し、思いがけないことと思ったのだった。今年の春に聴いたあの音色がわたしの裡に眠っていて、こんなことで呼び起こされるとは。